依存性の注入 (DI) システムは、内部的に現在のインジェクターが利用可能なランタイムコンテキストに依存しています。
これは、インジェクターは、このようなコンテキストでコードが実行される場合にのみ動作することを意味します。
注入コンテキストは、次の状況で使用できます。
- DIシステムによってインスタンス化されるクラス(
@Injectableまたは@Componentなど)の構築(constructorを使用)中。 - このようなクラスのフィールドのイニシャライザー。
Providerまたは@InjectableのuseFactoryに指定されたファクトリー関数。InjectionTokenに指定されたfactory関数。- 注入コンテキストで実行されるスタックフレーム内。
注入コンテキストにいるかどうかを知ることで、inject 関数を使用してインスタンスを注入できます。
NOTE: クラスコンストラクターとフィールドイニシャライザーでの inject() の基本的な使用例については、概要ガイドを参照してください。
コンテキスト内のスタックフレーム
一部のAPIは、注入コンテキストで実行されるように設計されています。これは、たとえば、ルーターガードの場合です。これにより、ガード関数内で inject を使用してサービスにアクセスできます。
CanActivateFn の例を次に示します。
const canActivateTeam: CanActivateFn = (route: ActivatedRouteSnapshot, state: RouterStateSnapshot) => { return inject(PermissionsService).canActivate(inject(UserToken), route.params.id); };
注入コンテキスト内で実行する
すでに注入コンテキスト内にいない状態で、特定の関数を注入コンテキスト内で実行したい場合は、runInInjectionContext を使用できます。
これには、たとえば EnvironmentInjector のような特定のインジェクターへのアクセスが必要です。
src/app/heroes/hero.service.ts
@Injectable({ providedIn: 'root',})export class HeroService { private environmentInjector = inject(EnvironmentInjector); someMethod() { runInInjectionContext(this.environmentInjector, () => { inject(SomeService); // 注入されたサービスで必要な処理を行います }); }}
inject は、インジェクターが要求されたトークンを解決できる場合にのみインスタンスを返します。
コンテキストのアサート
Angularは、現在のコンテキストが注入コンテキストであることをアサートし、そうでない場合は明確なエラーをスローするための assertInInjectionContext ヘルパー関数を提供します。呼び出し元の関数への参照を渡すと、エラーメッセージが正しいAPIエントリーポイントを指し示すようになります。これにより、デフォルトの汎用的な注入エラーよりも明確で実用的なメッセージが生成されます。
import { ElementRef, assertInInjectionContext, inject } from '@angular/core';export function injectNativeElement<T extends Element>(): T { assertInInjectionContext(injectNativeElement); return inject(ElementRef).nativeElement;}
このヘルパーは、注入コンテキスト内から(コンストラクター、フィールドイニシャライザー、プロバイダーファクトリー、または runInInjectionContext 経由で実行されるコード)呼び出すことができます。
import { Component, inject } from '@angular/core';import { injectNativeElement } from './dom-helpers';@Component({ /* … */ })export class PreviewCard { readonly hostEl = injectNativeElement<HTMLElement>(); // フィールドイニシャライザーは注入コンテキスト内で実行されます。 onAction() { const anotherRef = injectNativeElement<HTMLElement>(); // 失敗: 注入コンテキスト外で実行されます。 }}
コンテキスト外での DI の使用
注入コンテキスト外で inject を呼び出したり、assertInInjectionContext を呼び出したりすると、エラー NG0203 がスローされます。